子どもの良い行動を増やし、良くない行動を減らすには?

子どもの良い行動を増やし、良くない行動を減らすには、どうしたらいいのでしょう?

細川院長

注目の力を活用しましょう


子どもは親やまわりの大人からの注目を欲しています。注目こそが、親が子どもに向ける最大の力とも言えます。

細川院長

たとえば、子どもはどうして「悪ふざけ」をするのでしょうか?

注目してほしいから?


そうですね。「親がしてほしくないことをわざとする」のは、それが親の注目を浴びる手っ取り早い方法だからです。

そもそも、注目を欲しているのは子どもに限りません。
たとえば、あなたがパーティーで見知らぬ人に勇気を出して「こんにちは!」と声をかけたとき、その人があなたをチラリと見てから何も言わずに目を背けたとしたら、あなたはどう感じるでしょうか? 
「勇気を出して知らない人に声をかける」なんて行動は、もう取らなくなってしまうかもしれませんね。

注目の種類

注目には、肯定的注目と否定的注目があります。

肯定的注目

ほめる、認める、興味を示す、関心を示す、笑顔を返す、礼を言う

否定的注目

しかる、注意する、どなる、説教する、ため息をつく、眉間にしわを寄せる

肯定的注目も否定的注目も、子どもの行動を強化し、増やします。

「ほめる」または「しかる」対象は「行動です」。
態度ではなく、目に見える行動に焦点を当てることがポイントです。

× 診察室ではいい子にする ▶ ○ 診察室では椅子にじっと座っていることができる

行動を3種類に分ける

行動を次の3つに分けましょう。

① 好ましい行動・増やしたい行動

今している行動で、さらに増やしてほしい行動のことです。
「こうしてほしい」という行動ではありません。

例:あいさつをする、呼ばれたら返事をする、ありがとうを言う、ごめんなさいを言う、朝ひとりで起きる、怒ったときに手を出さずに言葉で伝える、自分でゲームをやめる、言われなくても宿題を始める、部屋を自分で片付け始める、読書をする、きょうだいと静かに遊ぶ、嘘をつかず正直に話す、ちょうどよい声量で話す

② 好ましくない行動・減らしたい行動

今している行動で、減らしてほしい行動のことです。

例:騒ぐ、わめく、汚い言葉を使う、悪口を言う、からかう、邪魔をする、すねる、かんしゃくを起こす、物をねだる、きょうだいとケンカする、爪をかむ

「~しない」というのは行動ではありません。あくまでも「~している」という視点で考えてみてください。

例:
× いつまでも勉強しない ▶ ○ ずっとスマホをいじっている

③ 危険な行動・許せない行動

人を傷つける行動などが当てはまります。

例:暴力をふるう、暴言をはく、物を壊す、自分の体を傷つける、車道に飛び出す、高いところから飛び降りようとする、家に帰ってこない

これに当てはまる行動はそれほど多くはありません。
親を悩ませる行動の多くは、③ではなく②の方に入るでしょう。

許せない行動って、減らしたい行動と違うんですか?

細川院長

あまり違いがないように思えるかもしれませんが、使う対応スキルが大きく違いますので、分けて考えましょう


「減らしたい行動」と「許せない行動」を分け、区別なく「しかる」のではなく、対応を変えることで、子どもと衝突することが少なくなります。

それぞれの行動への対応

① 好ましい行動・増やしたい行動

肯定的注目を与えることで、強化します。

例:
ほめる、認める、励ます、興味・関心を示す、気づいていることを知らせる、サムズアップする、笑顔を返す、礼を言う

肯定的注目には、言葉でほめるだけではなく、注目をすること自体が含まれます。
視線を合わせることを忘れずに。

やるべきことをやっただけなのに「ほめる」って、何だかわざとらしくないですか?

細川院長

いつも「早くしなさい!」「また、やってない!」と言うのになれていると、違和感を感じるかもしれませんが、その瞬間のきまりの悪さに見合うだけの効果はありますので、まずは試してみましょう


違和感やぎごちなさを感じなくなり、毎日の習慣になるまで、ほめることを意識的に続けましょう。ほめすぎてダメということはありませんので、とにかくほめましょう。

なお、ほめるのは「行動」であって、子ども自身ではありません。
× いい子ね ▶ ○ 妹と静かに遊んでいられたね

ほめ言葉は、どんな言葉でもいいんですか?

細川院長

ほめ言葉はシンプルでわかりやすくなければいけません


ほめ言葉はシンプルでわかりやすくなければいけません。
限定条件をつけてはいけません。

例:
× もっと早くやっていれば、もっと良かったよ
× やっぱりできたじゃないの、私が言ったとおりでしょ?
× 一番を取るなんてすごい!
× さすが、ママの自慢の子ね!

ほめるタイミングって、ありますか?

細川院長

ほめるタイミングはできるだけ早く、つまり、その行動の最中か直後がベストです


強化はタイミングが近接しているほど効果を発するので、ほめるタイミングはできるだけ早く、つまり、その行動の最中か直後がベストです。

「宿題を終えた」など何かをやり終えたときではなく、「宿題を始めた」など何かをしている最中にほめるのが効果的です。

そもそも始めようとしないから、親の方でムリにさせているのであって、ほめようがないのですが?

細川院長

ステップを細かく分け、「始める準備をした」ということからほめましょう


最初は「やること」を言葉で伝え、子どもが始めるのを我慢強く待つ必要があります 。
最初は余計に時間がかかるので、余裕のある時間を確保する必要がありますが、その努力に見合うだけの成果はあるでしょう。

子どもも親からガミガミ言われず、親もガミガミ言わないで済むとしたら、やる甲斐があると思いませんか?

② 好ましくない行動・減らしたい行動

①と反対の行動を取ることで、弱化します。

肯定的注目の反対は、否定的注目ではありません。
否定的注目も注目の一つの形ですので、行動を増やしてしまいます(強化)。

必要なのは、注目しないこと、つまり「無視」です。

注目しない=無視で対応し、好ましくない行動をやめるのを待ちます。

なお、無視するのは「行動」であり、子どもではありません。

③ 危険な行動・許せない行動

警告の上、ペナルティーで対応します。ペナルティーとは、懲らしめることではありません。危険な行動をとったことに対して責任を取るべく、制限をもうけます。

行動に制限を加えることになるので、なるべく少ないほうが良く、上記の「好ましくない行動・減らしたい行動」をここに入れるべきではありません。

対応スキルの身につけ方

このスキルは、①ほめる ▶ ②無視する ▶ ③制限を設ける の順番で身につける必要があります。

許せない行動を止めるため、すぐに③「制限を設ける」スキルを使いたくなるかもしれませんが、その前に①「ほめる」、②「無視する」スキルを身につけなければ、③「制限を設ける」スキルは効果を発揮しません。

そのために、ある程度の時間をかけて取り組んでいきましょう。

この方法は、手に負えないADHDの男の子向きですか?

細川院長

性別や年齢は関係なく、子育ての基本ですので、発達障害のお子さん以外の子育てにも役立ちます